必見!日本の心層「ラースト・サムライ」
(12月22日)

 12月18日のロイター通信によると、「ラースト・サムライ」で渡辺謙さんがゴールデングローブ賞の助演男優賞候補にノミネートされたと報じられた。

 「ラースト・サムライ」は、明治政府の廃刀令に対して、武士の威厳と価値を守ろうと抵抗した武士達を合衆国騎兵隊大尉の目を通して映画にした作品だ。もちろん史実ではない。しかし、武士とは何か。武士道とは何か、その価値を表そうとしている。
 この映画はいろいろな角度から論じることの出来る映画だと思える。年代によっても見方が変わる。戦争を経験した世代、十代・二十代の若者達、教育に関心をもつ人、イラク復興支援に関心を持つ人たち等。アメリカ人から見た見方。フランス人の見方。ドイツ人の見方。中国人の見方。イスラム圏の人たち。アフリカ世界の人たち、それぞれこの映画の感想はかなり違うと思う。

 太平洋の島々で、壮絶な日本軍と戦ったアメリカ人にとって、日本の精神世界を知ろうと言う欲求は、戦後半世紀以上たった今も衰えないものがあるように思える。
 『葉隠れ』的な精神世界は、今でも日本人の中にはあるのだ。他(企業・家族・地域・国家・国民)のために己をむなしくすることは潔いと考える価値観は、薄くなってきたとは言え、今でも生きている。この映画は、自己中心的な人が多くなってきた日本人に、他のために尽くす価値観を呼び覚まそうとしているのだろうか。
 『和魂洋才』―「明治政府の近代化された洋式軍隊と刀・弓矢で立ち向かう勝元たち武士団との戦闘。戦死した勝元に土下座して尊敬の念を表す洋式軍隊の兵隊達。」の場面で、思わずこの言葉が頭をよぎった。

 しかし、私が、注目した言葉は、『武士道』でも、『和魂洋才』でもない。それは、トム・クルーズが演じたオールグレン大尉が日本人の生活を見て評した言葉―『完璧主義』―だ。
 これこそ、『葉隠れ』よりも日本人の深層を流れる価値観なのだ。この日本人の『完璧主義』が多くの文化を生み、価値を生み、繁栄をもたらしてきた。反面、現代では精神的な災いももたらしてきている。余りにも、急速な文明と情報の氾濫に、『完璧主義』が追いつかなくなってしまった人々が増えてきたのだ。

 もともと『完璧主義』など無理があるのだ。だからこそ、先人達は、『完璧主義』を求めながら、そこから逃れる手段を用いてきた。
 あいまいな言葉やあいまいな態度だ。
 この映画の英語字幕は図らずも、そのことを表現している。
 「あのー」と言うあいまいな日本語のせりふが、「I don't think ―」という意思をもった英語に変わっていた。

 「ラースト・サムライ」なかなか面白い。